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『市川崑物語』(07年)監督:岩井俊二 [映画(08年~)]

日本映画の一観客として、


どの監督の映画をいちばん多く見ているのか、と訊かれたら、


私は躊躇なく、市川崑氏の作品と答える。               三島由紀夫


市川崑物語

市川崑物語

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2007/06/29
  • メディア: DVD


内容(「Oricon」データベースより)
鬼才・岩井俊二が日本映画界の巨匠・市川崑の幼少期から太平洋戦争を経て、現在に至るまでの物語を描いたドキュメンタリー!岩井俊二が、彼ならではの視点で市川崑の軌跡を辿り、尊敬と憧れの念を込めた作品へと完成させた傑作。これまであまり語られることのなかったアニメーター時代などが描かれているのは貴重。中でも生涯の伴侶であり、シナリオライターとして名コンビを組んだ和田夏十とのシーンは必見!


そういえば今週は二つとも2000年代で、映画人へのオマージュ的作品を観てますね。しかも市川崑に新藤兼人という二大大御所。


市川崑の作品は僕も好きだ。やっぱり「金田一耕輔シリーズ」がすごいと思うが、それは公開当時、映画少年だった岩井俊二もその一人だった。


映画はノーナレーションでタイトルクレジットの文字を見て進行するという変わったスタイル。そこがなんだかな~とちょっと変に思ってしまう。悪く言うとネットのFlashムービーでも似たようなことをしているわけだし、タイトルクレジットは物を伝えるにはストレートだけど、見る側にとしては道路標識のような「提示を受ける」みたいな感覚がして、声によるメッセージが耳から入らない分、頭に響かない。BGMは効果的に使っているのが岩井流だなと思う。映画館で見ようとは思わないなあ。めったやたらと市川崑の作品のシーンが挿入されるけど、それはテレビのドキュメンタリーでもやってるわけだし。タイトルクレジットだけなら簡単に作れるぞ。


前の『三文役者』を観た後では、アプローチが簡単すぎるぞ。と思ったのと同時に公開は昨年なので、『犬神家の一族』のPRも強く感じる。市川崑のファンならリメイクには驚きと期待があるだろう。岩井俊二もそのファンの一人ということなのか。


『三文役者』(00年・近代映画協会) [映画(08年~)]

「脇役が~おらんかったら~主演俳優は~なにもできまへんのや~。」


三文役者 特別編

三文役者 特別編

  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2001/06/08
  • メディア: DVD


内容(「Oricon」データベースより)


戦後の日本映画の貴重なバイプレーヤーで、自らを“三文役者”と呼んだ役者・殿山泰司の半生を描いた、新藤兼人監督が贈る名作ドラマ。


最近なにかと新藤兼人ですね。監督曰く、「映画は集団意識によって描かれる。」んだそうだ。年初めからなんだかすごいラインナップになりそう。


まず殿山泰司という人は自らを、三文(つまらない、値打ちのない)役者と称して、数々の映画に出演。その演技とはバイタリティーにあふれ、数々の名演を披露した。だが私生活では酒に女に癖が悪く、そのだらしなさには、本人さえ苦闘するが、役者魂があった。滑稽で悲しくて、そこが人間味あふれる殿山泰司「タイちゃん」だった。


その殿山泰司という人をこよなく愛し、監督作品にはかならず出演させていた新藤兼人が、彼への最大のオマージュとして描き上げた。


作品は冒頭から彼の出生紹介から始まる。構成としては変わっていて、時たま実際に彼の俳優仲間であった「おとじ」(乙羽信子の愛称。当時そう言われていたようだ。)がコメンテーターとして登場。殿山を演じる竹中直人に直接、合いの手のように会話するという不思議な形。そして劇中、彼の出演作品のシーンを挿入し、当時の彼の姿を強く印象付けている。映画の裏話、実際交友のあった役者を起用し、対話させるがドキュメンタリーなのか劇映画なのか、「実際の話」感覚がする映画だ。


新藤兼人らしい男女の性の大らかな表現がここでも出てくる。荻野目慶子が演じる側近の妻(殿山は籍も入れた内縁の妻もいたが、年の離れた若い妻と生活していた。)のヘアーまで見せるその大胆さ。あっけらかんとしている。


タイちゃんが生きた時代が時代なだけに、忠実な時代設定を描いているではなし。街中のシーンでは適当に現代の街並みで撮影している。「監督の背中にゲロ吐いてしもた~。」なんて自分の失態に泣き叫ぶ彼の人生、見ていて笑ってしまう。タイちゃんがもっとも恐れ、もっとも尊敬していたのは監督だった。


DVDでは公開時、モントリオール国際映画祭に招待された孫が新藤兼人をつれてカナダへ行く15分程度のドキュメンタリーが入っていた。


鬼…鬼だ!『鬼婆』(64年・近代映画協会) [映画(08年~)]

「わしは人間じゃー!」


鬼婆

鬼婆

  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2001/08/10
  • メディア: DVD


内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより)
『恐山の女』の吉村実子出演の和製ホラー。戦国時代、落武者の武具・甲胄を売りさばいて暮らしている義母と娘がいた。娘の夫の友人が帰郷し、娘と激しく燃える姿をみた義母は嫉妬のあまり般若の面をつけて二人を脅かすが遂に面がとれなくなる…。


新年早々どえらいもんを見てしまった。この映画はショッキング。観た後、うなだれるぐらいのショックがある。いい意味で新藤兼人の演出はすごいよ。乙羽信子さん、なんてすごい役者だろう。


笹が生い茂る湿地帯。そこに迷い込んだ落ち武者を襲撃し、甲冑をはいで売りさばき、死体を穴に捨てる鬼のような母娘がいた。ある日、母の息子(娘の夫)と共に、戦に連れて行かれた男が戻ってくる。彼が言うには息子は殺されたのだという。夫を亡くした娘は戻ってきた男に誘惑され、夜な夜な抜け出して男の住処に行くようになるのだが、母はそれに嫉妬する。ある夜、娘の夜の行動を追う母の前に謎の般若の面をつけた侍が現れるのだが…。


これほど見てくれの悪い映画はそうない。乙羽信子の演じる母の目、形相、まさに鬼だ。暑い夜に半裸で寝る母と娘(吉村実子)の荒くれ姿。吉村実子の野生たるエロスもすごい。新藤兼人のこの下品さは深作欣二よりすごいかも。野獣のように画面いっぱいに広がるエネルギーが刺激になって目に焼きつく。インサートで入る笹のなびき、草原を走る疾走感、舞台の世界も笹で表現しているのも意味深い。


DVDでは撮影当時のプライベートフィルムが特典で入っている。8mmらしく音は入っていないのだが、撮影場所は千葉県印旛郡栄町安食というところで撮影されたようだ。生い茂る笹の湿地帯にバラック小屋を設営して、ロケをしたようだ。湿地帯なので水はけが悪いようで、夜になると羽虫が大量に飛ぶところだったようだ。撮影スタッフ、役者、監督ももちろん出ている。現場はとても暑そう。


『太平洋奇跡の作戦 キスカ』(65年・東宝) [映画(08年~)]

「人間たまには怒ったほうがいい。戦争をしておるのだからな。」


太平洋奇跡の作戦 キスカ

太平洋奇跡の作戦 キスカ

  • 出版社/メーカー: 東宝ビデオ
  • 発売日: 2005/07/22
  • メディア: DVD


内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより)
太平洋戦争が激烈さを増し米北太平洋艦隊に包囲されたキスカ島守備隊員の命を救うため、日本海軍第5艦隊第1水雷戦隊は、わずか12隻の艦隊で米艦隊の真只中に突入していく。勇猛果敢な作戦の全貌を、指揮した大村司令官を中心に描いた戦争ドラマ。


1943年5月、アリューシャン列島アッツ島守備隊が玉砕。そこよりも東、敵陣深く取り残された島、キスカ。そこでは毎日のように米軍の空襲におびえる守備隊5200名がいた。ミッドウェー海戦により大部分の兵力を失っていた日本軍は度重なる玉砕の二の舞をさせまいと、キスカ島守備隊5200名の救出作戦を計画。海軍はなけなしの艦隊を組織して敵陣へと向かう。


戦争映画は死への恐怖だとか、陰とした作品が多いけど、これは違う。成功した作戦を描いているのだから全体的に明るい感じ。天候(霧)をうまく利用した作戦行動。条件判断による帰航命令。ぎりぎりまで航路変更を指揮する作戦など見ていてわくわくする。アドベンチャー映画のようだ。プロジェクトXだね。


邦画の戦争映画は主に太平洋戦争が舞台なだけに、冬季装備の日本兵の姿は珍しい。


作戦参謀の一人に西村晃さん。この人好き。若いときにドラキュラの役やってほしかったな。志村喬さん。リーダーシップは『七人の侍』ゆずりだね。物資輸送の潜水艦艦長に佐藤充さん。この人戦争映画にしょっちゅう出てるな。笑顔が素敵。三船さんは大スターなので文句の言いようがない。ほんとに豪華出演だ。

予告編がyoutubeにあったのでどうぞ。


『テルマ&ルイーズ』(91年・米) [映画(08年~)]

「こんなに目が覚めてるのは初めて…」



テルマ&ルイーズ

テルマ&ルイーズ

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2007/01/26
  • メディア: DVD


<キャスト&スタッフ>


 スーザン・サランドン、ジーナ・デイビス、マイケル・マドセン、ブラッド・ピット


監督・製作:リドリー・スコット、製作:ミミ・ポーク、脚本:カーリー・クォーリ


内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより)


スーザン・サランドンとジーナ・デイビス共演のロードムービー。ドライブ旅行に出掛けた平凡な主婦と中年ウェイトレス。ところが道中で男を射殺してしまい、警察に追跡される。


最近アメリカ映画観てなかったね。この映画はなんていうのかすごいアメリカっぽさが感じられる。アメリカ人の旅する心というのか。


平凡な主婦ルイーズ(ジーナ・デイビス)とウェートレスのテルマ(スーザン・サランドン)は親友同士。テルマはルイーズより年上でおばさんになりかけた頃、最近長年付き合った彼氏と別れたばかり。ルイーズは若くして結婚し、父親のように束縛する夫との生活にうんざりしている。アメリカ映画で面白いロードムービーの要素が魅力的な映画。女性2人が主人公の日常を忘れさせる旅というのが珍しい感じもする。


アメリカ映画は暴力やセックスがかならず入ってるけど、この映画の主人公はそういった荒くれものとは違う保守派な人だということに注目。最初にオープンカーにありったけの荷物や服を積んで、準備万端で出かけるんだけど(そこが保守派)、男を撃ち殺して警察に追われていくうちに、だんだんと服装も化粧もキャラクターも変わっていく姿が爽快なんだ。着飾らないでワイルドになっていくその姿はファンキーだよ。人間見てくれが大切ではないというのがわかる。


ブラッド・ピットが若くして出演しているのにも注目。カウボーイハットにジーパン姿でアメリカンな服装が実に似合う。役柄通り、軽そうな男を熱演してる。


カンパネルラ~!『銀河鉄道の夜』(85年) [映画(08年~)]


風がどうと吹き




木がひゅうと騒ぎ




草がざわざわとなびき



 


 


汽笛が


オーンと


聞こえてきます。


銀河鉄道の夜

銀河鉄道の夜

  • 出版社/メーカー: PIASM
  • 発売日: 2002/03/22
  • メディア: DVD


内容(「DVD NAVIGATOR」データベースより)星祭の夜、病気の母を持つ少年・ジョバンニは、丘の上に現れた不思議な汽車に乗り込み、銀河の旅が始まる…。宮澤賢治の原作を別役実が詩的なイメージを膨らませて脚色、細野晴臣が音楽を担当した。大人にも見応えのあるファンタジーに仕上げている。  


昨年のDVD馬鹿買いの残り一本がこれだった。新年初映画!日本アニメーション映画の有名作。宮崎駿のアニメの次に愛されるのがこの映画じゃないだろうか。一度観たことがある人はその世界観、音楽に驚いたことだろう。何度も観てるけどこの不思議な気持ち、また味わいたかった。  


DVDだと音がいいのに驚く。また音響も、この時代のアニメの域としてはすごい。登場人物を猫にしたところがこの作品のいい所だと思う。絵本やヌイグルミのように、リアルさを追求しないファンタジーの素晴らしさは、動物の擬人化だと思うね。なんで猫?と思うけど、目が特徴的で、あのスラッとしたスタイルは神の化身だとか魔女の変身姿だとか、何か神秘的な存在なんだ。


まず冒頭の細野晴臣さんの音楽は何度聞いても驚く。無国籍で不思議なフィーリングで、夢の中というか異空間に入ったような感覚にしてくれる。


ジョバンニとカンパネルラ。微妙に似てない。


 



「鳥を捕る人」。うさんくさい顔をしているが、悪い人ではない。


「灯台守」。声は常田富士男さん。いい声。


ザネリは嫌なやつだ。


他にも「盲目の無線技師」、学校の先生に似た地質学者、牧師と幼い姉弟など、登場人物たちとの出会いがロードムービーのよさがある。


一面に広がるトウモロコシ畑で「新世界交響楽」が流れる気持ちのよさ、今は冬だけど、ホッとする暖かさに満ちている。学校の退校時間に流れていたあの曲だ。


この不思議な空間、せつなさ、素晴らしい。
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